なんとなくの体調不良は、自律神経のバランスが崩れているせいかも!?
投稿日: 2024年04月16日
最終更新日: 2024年04月22日
自律神経は私たちの身体のさまざまな機能を調節する働きを持っています。体調不良のときにしばしば「自律神経のバランスが影響している」とも言われますが、それもこのためです。では、自律神経には具体的にどんな働きがあり、どう体調に影響するのでしょうか?解説します。
自律神経とは
自律神経には「交感神経系」と「副交感神経系」があって、これらがバランスを取り合って心身の内部環境であるホメオスタシス(恒常性機能)を担っています。
交感神経は別名“活動する神経”とも呼ばれ、運動や仕事などをするときに、心臓の拍動・血圧・血糖・呼吸などの増加、ホルモン分泌の促進、皮膚の発汗、子宮の収縮などに影響します。一方、副交感神経は“休む神経”とも呼ばれ、内臓や器官の働きをリラックスさせたり、休息や睡眠などで優位に働きます。また、消化器の働きや消化液の分泌を促進したり、排尿を促したりする働きもしています。
このように、交感神経と副交感神経とは、いわば、車の運転で喩えるとアクセルとブレーキのように相反する働きをすることによってバランスを保っています。それが、生活習慣の乱れやストレスや疲労、あるいは体調などによってバランスが崩れることによって、さまざまな不調や病気が起こってくることがわかってきます。
自律神経の働きと感情の関係
自律神経の障害で起こるさまざまな不調が起こっているケースでは「自律神経失調症」と診断されることがあります。「自律神経失調症」は医学的に正式な病名ではない、とも言われますが、一般には女性に多い病気だとされています。それは、女性ホルモンの分泌が自律神経の働きに大きな影響を与えているからだとされています。じつは、自律神経失調症は身体に症状がでる病気ですが、精神的なことが原因で起こる場合も少なくなく、心療内科が専門的な治療を行ってくれるといった心身症的な側面もあります。
たとえば、感情の動きと自律神経の働きには次のような関連性があるといわれています。
・平穏や休息時:交感神経と副交感神経がバランスよく働く
・不安や緊張、興奮や怒りが持続する:交感神経と副交感神経とがバラバラに興奮する
・激しい怒り、突然の恐怖、驚き:交感神経が極度に興奮する
・失望や悲哀、抑うつや憂うつ、疲弊状態:交感神経と副交感神経の両方が抑制される
自律神経の不調が原因で起こる症状
現代の生活スタイルは必ずしも自律神経のバランスをいつも保つようにはなっていません。また、私たちの体質や性格の中には、自律神経のバランスを崩しやすいようなものもあります。その結果、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうことで起こるのが「自律神経失調(症)」です。昨日お話ししたように、自律神経はホメオスタシスといって、一定のバランスの取れた状態を保つことによって心身の健康をキープするのに重要な役割を果たしています。自律神経失調によってこれが崩れると、次のような多様な症状が現れます。
全身症状
だるさ、疲れやすさ、めまい、立ちくらみ、気が遠くなる、食欲不振、不眠、微熱など
部分的症状
・頭:頭痛、頭重感
・目:眼精疲労、ドライアイ
・口:ドライマウス
・耳:耳鳴り、詰まった感
・のど:異物感、圧迫感、つまった感じ
・心臓や血管:動悸、胸痛
・呼吸器系:息が吸いにくい、苦しい、つまる感じ、過換気症状
・筋肉や関節:首や肩の凝り、痛み、背中や腰の痛み
・皮膚:乾燥、痒み、多汗
・手や腕:冷え、しびれ、痛み
・消化器系:吐き気、便秘、下痢、腹部の張り
・泌尿器系:頻尿、残尿感
・生殖器:不感症、性交不快、月経痛
・足:冷え、しびれ、ほてり
精神症状
不安、イライラ、気が沈む、記憶力低下、注意力低下など
このように、実に多くの症状が起こってきます。また、個人によって症状の出方もさまざまで、単独で出る人もいれば、重なり合って症状が起こっている人もいます。突然現れたり消えたりすることもあります。ただし、そうした症状が何度も繰り返し起こっていることと、原因がよくわからないというのが、自律神経失調症の特徴です。たとえば、激しい運動をすると心臓の動悸が激しくなりますが、これは原因がはっきりしています。疲れた時の疲労感や、悩み事があるときの不眠や不安も同じです。このように原因がはっきりしているわけではないこと、また、病院などで検査を受けても、さまざまな器官の異常として現れるわけでもありません。ですから、自律神経失調症のさまざまな症状は「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれています。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン