改めておさらいしたい!「五月病」について
投稿日: 2024年04月30日
新年度の4月になってから約ひと月が経ちました。ご自身やご家族の転勤、異動、転居での新生活や新しいご近所付き合い、子どもの転校など、このひと月、新しい生活や環境の変化が起こって、慣れない中で頑張ってやり抜いてきた方も少なくないことでしょう。例年、ゴールデンウィークが明けると、張りつめていたココロやカラダが一転して、無気力状態になってしまうことがよく起こります。いわゆる「五月病」です。この時季は五月病に関する情報を見かけることも多いですが、あらためておさらいしておきましょう。
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五月病の症状をチェック
学校や職場が新たに変わって、慣れない環境の中で頑張ってきたのが、急転して、うつ状態をきたすことを一般的に「五月病」と呼んでいます。最近では、ひと月遅れで6月になって、梅雨の時期になって、このような症状が出てくる人も増えてきたようで「六月病」とも呼ばれるようになってきました。また少し早く症状が現れる人もいて、「四月病」などと呼ばれることもあるようです。
GWが終わってドカンと落ち込まないように、まずは現在の自分の状態をチェックしてみてください。五月病が起こる予兆は、次のような状態がどれくらいあるかにかかってきます。
身体の不調
心の不調
五月病の正体
五月病は医学的には、うつ病一歩手前の「適応障害」と言われます。急激な環境の変化についていけずに心身が悲鳴を上げている、ストレス反応です。多くは一過性ですから、そのうち自然に症状が消えていったり、生活習慣を整えることで改善が図れます。一般に、適応障害は明確なストレスの原因から3ヶ月以内に症状が現れ、日常生活に支障を来している場合に診断される、ストレスが許容範囲を超え、限界を突破してしまったときに起きる状態です。いいかえれば、環境にうまく馴染めないことから生じる心のトラブルで、抑うつ状態や不安、意欲や自信の喪失、体調面での不調、イライラして怒りっぽくなる、アルコールなどへの嗜癖などの症状を呈します。
適応障害はうつ病との類似性が高いのですが、大きな違いはストレスの原因となるストレッサーから解放されると元気を取り戻すことです。この点うつ病は、ストレッサーがなくなっても回復に時間がかること、とりわけ、高齢者や発症から治療まで長時間放置していた場合など、回復に相当の時間がかかります。また、うつ病の場合薬物療法が有効ですが、適応障害では、カウンセリングなどに薬物療法を併用することが有効という指摘もあります。
職場でも気をつけたい適応障害やうつ病のリスク
会社や職場で、適応障害やうつに至るパタンには次のようなものがあります。
容量オーバー:その人にかかるストレスが対処できる容量を超過する場合
過労や睡眠不足による疲労の蓄積、異動などで環境が変わったり担当が変わった時、職場や環境に慣れて周囲からの期待が増え、仕事が質・量ともに急激に増えるなど。
主体性を奪われた場合:価値観やライフスタイルを大きく妨害された場合
自由裁量が全くない、分厚いマニュアルで手順がすべて決められている場合など、自主性が発揮できない状態が長時間続く時など。
振り回され続けている場合:管理者・監督者に起きやすい
部下が反抗的だったり、逆に依存的だったりする場合、当の管理職が、そうした関係性に距離が取れなくなるような人間関係をめぐる事態。また、目標やノルマの達成に振り回される事態もあります。「昇進うつ病」といった呼び名もありました。
未病は漢方のことばで、「ハッキリとした病気に罹る以前の軽微な予兆が見られる状態(広辞苑)」という意味です。適応障害は環境や場になじむことができないストレス反応ですが、長く続くと「うつ病」に発展していく、いわば、うつ病の「未病」状態とみなせるかもしれません。ですから、五月病も放っておくと、うつ病になってしまう場合もありうるので、体調に異変を感じたら、まずは心身を休め、周囲に相談しましょう。また症状が続く場合や日常生活に支障をきたす場合には医療機関を受診することも大切です。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン