悪いことばかりじゃない!ため息を活用して健康増進をはかろう!
投稿日: 2024年04月22日
ため息の意味を辞書で調べると、「気苦労や失望などから、また、感動した時や緊張が解けた時に、思わず出る大きな吐息」(goo辞典)とあります。ため息はガッカリした時にするものというイメージがありますが、感動や緊張の解けた時などにも出ると指摘されています。もう一つ、ため息の意味として「吐息」とされていること。呼吸には吸うことと(吸気)と、吐く(呼気)とがありますが、ため息では呼気が強調されています。あらためて「ため息」を、呼気を中心とした呼吸法とみなしてみると、嘆きの表現という文学的な意味よりも、健康増進の呼吸法という新しい意味が見えてきます。そこで、今回は健康増進という観点からため息について考えてみたいと思います。
ため息=吐く息を長くする呼吸のメリット
自律神経は、交感神経と副交感神経の二つの神経からできています。交感神経は、昼間活動や緊張、ストレスといったときに優位に働いています。一方副交感神経は、休息やリラックス状態のとき、特に夜間や睡眠中に優位になります。ストレスの多い現代、どうしても交感神経優位の状態が続いてしまいます。自律神経は自分の意思とは関係なく働いています。それをコントロールするために、ときどき意識して副交感神経を働かせる必要があります。そのためには、吐く息をできるだけ長くすると、副交感神経が優位となり、血流がよくなって、筋肉が緩み体をリラックスさせることができます。お腹をへこませるほど息を吐く腹式呼吸です。呼吸は息を吸うことよりも吐くことに意識を向け、長く吐くと自然に息は吸えますので、息を吸うことは意識しなくてもいいのです。呼気をしっかりとする「ため息」は、空気を吸い込む「吸気」を促進させます。これによって大脳皮質が活性化すると言われています。また、肺の内部では「肺胞」と呼ばれる小さな空気の袋が酸素を取り込み、体内の二酸化炭素(CO2)とガス交換をしています。この時、ため息は、しぼんでしまった肺胞を再び膨らませてくれる作用をするとのことです。
ため息=吐く息を長くする呼吸のデメリット
一方、不安神経症、睡眠時無呼吸症候群、乳幼児突然死症候群(SIDS)など多くの神経疾患は、不適切な呼吸と関連づけられていて、たとえばパニック障害では、ため息を多くつき過ぎるため、大脳皮質が過剰に刺激され、不眠などの問題につながっている可能性があるという指摘もあります。ため息はしなくても、しすぎてもいけないということでしょう。
今回はマイナスイメージの強い「ため息」を別の切り口で解説してみました。
自己治癒力をもつため息。無理に抑えず、有効活用していくとよいということでしょう。上手にため息するコツとは、長く吐ききることです。ゆっくり深く吐き出すと、緊張が解消され、血液循環がよくなります。窮地に立った時ほど、意識して深く息を吐いてみましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン