特定の音が苦手!ミソフォニアについて
投稿日: 2024年01月24日
特定の音に過敏に反応する「ミソフォニア」。音嫌悪症あるいは音嫌悪症候群とも呼ばれています。どんな音に反応するのでしょうか。
このページの目次
ミソフォニアが苦手な音とは
2013年にアムステルダム大学が行った研究結果などから、一つは「人の身体が出す音」、もう一つは「環境が生み出す音」が多いといわれています。人の身体が出す音としては、咀嚼(そしゃく)、息、咳払い、鼻を鳴らす、くしゃみ・げっぷ・あくび、飲み込む音などが多いといいます。また、環境が生み出す音としては、雨の降る音、パソコンのタイピングの音、ペンをカタカタ鳴らす、時計のチクタク音、やかんのお湯が沸く音、車のアイドリング、赤ちゃんの泣き声、ガヤガヤいう声などが挙げられています。これらは「繰り返される音」という共通性を持っていますが、この繰り返しがミソフォニアを不快にさせると言われています。
ミソフォニアの反応
このようなさまざまな音に対して、ミソフォニアの反応は、感情・身体反応・行動の3つの側面に現れてきます。
過敏な否定的感情
・強い不安や恐怖
・怒り
・激しい嫌悪や憎しみの感情
・逃避反応
神経症的身体反応
・動悸
・心拍数の上昇
・手足の震え
・筋肉の緊張
・多汗
・過呼吸
・パニック発作
攻撃的行動
・音源となっている人への暴力
・自傷行為
ミソフォニアに関する研究は進んでる?
ミソフォニアに関する研究は始まって間もないようです。専門的な研究は2010年前後から知られるようになってきています。ですから、まだ正式に医学的診断によって疾患と認知されるには至っていません。今のところ、仮説的に聴覚過敏症、脳疾患、精神疾患といった可能性が取りざたされています。今後、さまざまなことの解明に期待がかかる新しい病気といえるでしょう。脳科学的には2017年2月にイギリスのニューカッスル大学が行った研究発表によると、ミソフォニアの人は大脳皮質の中の「島皮質(とうひしつ)」が、音を聞いたときに極度に活動的になって、感情抑制に異常が起こったり、不安障害のような身体反応を誘発するなどが想定されると述べています。ちなみに、島皮質は痛みや喜怒哀楽や不快感や恐怖といった、基礎的な感情の体験に重要な役割を果たす脳の器官であることが、最近の画像診断技術からわかってきています。
症状がつらいときは医療機関へ相談を
ミソフォニアはこれまで、短期でヒステリックな人やストレスが多い人に起こりやすいといわれてきました。しかし、最近になって上に挙げたような脳科学による解明も行われ、原因がだんだんはっきりしてきています。とはいえ、まだ多くのことが解明されていませんから、診断・治療といった医学的対処にいたってはいません。ですから、症状がつらい人は、聴覚の過敏性なら耳鼻科、不安障害のような反応が気になるなら心療内科、脳の機能性に疑いを持つなら神経内科といったように、症状によって受診する科も違ってくるでしょう。また、ストレスが症状を引き起こすことに対しては、ストレス・コーピングや生活習慣の整備によって、できるだけリラックスできるような環境を、本人も周囲の人も作りだしてあげる配慮が必要でしょう。もちろん、本人の症状や悩みについて、周囲の人はよく話を聴いてあげましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン