「痛っ!またできた」 イヤ~な口内炎の原因とは
投稿日: 2024年02月08日
口内炎は「口のなかの粘膜に起こった炎症」を指します。白く丸いものから、赤味を帯びたもの、えぐれてしまっているものなどさまざまです。大人の口の中は細菌が300種以上生息していますが、通常は唾液が口の中をきれいに保ってくれています。けれども、その細菌が何らかの影響で繁殖しやすい状況になると、炎症が起こって口内炎を引き起こします。では、どんな要因が細菌の繁殖に関係しているのでしょうか。その要因について解説します。
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要因1:物理的な刺激
たとえば、合ってない入れ歯や被せもの、矯正器具、犬歯などが口の粘膜の同じ場所にあたったり擦れたりして、赤く炎症を起こします。直接の刺激だけではなく、虫歯などが影響して、片側に偏って食べたりしているうちに口の中を噛んだりして起こることもありますし、熱いものを口にしたときに火傷して炎症を起こすこともあります。これらは『カタル性口内炎』と呼ばれ、白くただれてしまったり、ひび割れ症状を起こしたりします。乳幼児の場合だと、哺乳の際に使用するゴム乳首が口に合っていないことや、口に入れてしまうオモチャなどが慢性的な刺激となって起こる『ベドナーアフタ』という、上あごに左右対称にできる口内炎もあります。口に合う乳首に取り換えれば、数週間ほどで治癒します。
要因2:食品、金属、化学物質や薬などに対するアレルギー
義歯や被せものに使われる金属にアレルギーを起こすとか、特定食品にアレルギー反応を起こす場合など、『アレルギー性口内炎』と呼ばれる、粘膜に炎症が生じることもあります。
要因3:化学的な刺激
酸や薬剤などが口の粘膜を刺激して口内炎が生じることがあります。身近なものとしてあげられるのが、歯磨き粉成分による粘膜の損傷で、「ラウリル硫酸ナトリウム」という泡立ちをよくするための成分との関係が指摘されています。この物質は、強い脱脂力とたんぱく質変性作用を持っているため、皮膚や粘膜を痛めやすいのです。
要因4:ウイルス、カビなどによる感染
カンジダという口腔内に常在するカビ(真菌)の一種が増殖して口内炎が起こります。健康な時は悪さをしないのですが、入れ歯の清潔が保たれておらず口の中が不潔になっていたり、抗生物質やステロイド剤の治療を受けていて免疫力が低下したりしているときに、カンジダ菌が増えて発症します。『カンジダ性口内炎』と言い、白い苔状のものができて、のどの奥や食道にまで広がることがあるので注意が必要です。入れ歯によく起こることから、別名『義歯性口内炎』とも呼ばれます。痛みはあまりありません。白く苔状にならず粘膜が赤くなる場合は見過ごされやすいのですが、飲食時に舌にヒリヒリした痛みを感じたり、苦みを感じたり、口角にただれが出ることがあります。ヘルペスなどのウイルス感染によって起こる場合は『ウイルス性口内炎』と言い、ほとんどがヘルペスによるもののため、『ヘルペス性口内炎』とも呼ばれます。米粒大の小さな水ぶくれがたくさん出来るのが特徴で、発熱や全身倦怠感などの風邪症状や、神経痛のような痛みを伴ったりします。水ぶくれが破けると、強い接触痛がでます。ヘルペスに関しては、口の中で起きる性行為感染症が引き金になるケースもあり得ます。口と性器の直接接触を伴う性行為(オーラルセックス)がこれに当たります。口内炎の原因になりうるものとしては、ヘルペス・淋病・クラミジア・梅毒が代表です。唇や舌、歯肉まで腫れてしまいます。
要因5:からだの抵抗力の低下
ストレスや過労が原因で免疫力が低下して口の中の粘膜が弱くなってしまった時に発生する、もっとも一般的な口内炎を『アフタ性口内炎』と言います。痛みを伴いますが、1~2週間で自然治癒します。
要因6:喫煙
喫煙が原因で発生する口内炎は『ニコチン性口内炎』と呼ばれます。煙草に含まれるニコチンなどの有害物質が口の中に影響を及ぼすこと、乾燥した煙が口の中を乾燥させること、熱気のある煙が粘膜を刺激することが、口内炎をできやすくします。ニコチンは体内のビタミンを奪いますし、血管を収縮させて、末梢血管への血流が減少する結果、口の粘膜への栄養や酸素の供給へも悪影響を及ぼすと考えられます。症状は、口の中の粘膜や舌に、円い形状の、時にシワが寄ったような白い潰瘍(かいよう)ができる場合と、口の中の粘膜に点在する小唾液腺(しょうだえきせん)と呼ばれる部分が炎症によって赤くはれる場合とがあります。後者は白い粘膜に、赤い斑点が散在しているようにも見えます。 自覚症状はほとんどないことが多いのですが、炎症部分に痛みを感じたり、飲食時にしみたりすることがあります。ただ、これらは、治療をしたり、習慣の改善を行えば、数週間から数ヶ月で改善するものとされています。
このように、さまざまな原因がありますが、これらの原因を取り除いたり治療を行ったりしても、2週間以上症状が長引いたり、かえって悪化した場合は、耳鼻咽喉科や口腔外科へ受診しましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン