「フェロモン」ってどういうもの?
投稿日: 2023年01月27日
![](https://www.kangoworks.com/knowledge/wp-content/uploads/2023/01/pixta_83652186_M-560x373.jpg)
もうすぐバレンタインデー。好きな異性に告白をする日、としても捉えられていますが、この日が近づくにつれ「もてたい!」と思う人も多いのではないでしょうか。ところで、「もてる=フェロモンがある人」と表現されることもありますが、そもそも「フェロモン」が何を指しているのか、しっかり答えられる人は少ないかもしれません。そこで今回は「フェロモン」についてご説明します。
フェロモンとは
フェロモンの語源はギリシャ語の、運ぶ(pherein)と刺激する(hormao)が合わさって、「刺激を運ぶもの(pheromone)」という合成語です。動物から発生されるニオイなどの化学物質のことです。同じ種族の動物間で作用し、よく知られている「性フェロモン」も含めて、フェロモンの種類によって決まった反応が起こります。そんなフェロモン。大きく分けると次の2つに分類されます。
リリーサーフェロモン
フェロモンによって、他の個体に決まった行動を起こさせます。
・性フェロモン:オス・メスが惹きつけあう、交尾が可能なことを知らせる
・道標フェロモン:餌や住みかの場所などを知らせる
・警報フェロモン:敵の存在を知らせる
・集合フェロモン:交尾や越冬などのために仲間同士を集合させる
プライマーフェロモン
フェロモン物質をきっかけに内分泌に影響を与え、発育・発達・生殖などに影響します。ハチやアリでは「女王物質」というフェロモンがあり、女王個体が出すフェロモンによって、他のメスの卵巣の発育が抑えられ、働く行動を起こすようになるそうです。
ヒトとフェロモン
たいていの昆虫にはフェロモンによる行動が見られますが、コミュニケーションの中心がコトバである人間には、フェロモンはないと言われてきました。実際に、人におけるフェロモン分泌や反応については、まだ不明な点が多いようです。人間のフェロモンについての研究で有名なのは、「性周期同調フェロモン」。脇の下から分泌される無臭の物質で、これを嗅ぐことで月経周期が同調してくるというものです。寄宿舎効果(ドミトリー効果)といって、同居している女性同士で月経周期が同じになる現象です。それでもフェロモンは、その詳細や受容体については、まだわかっていないことが多く、研究の段階です。
また、フェロモンとホルモンは似たような言葉ですが、まったくの別物です。フェロモンは体内から放出され、同種の他の個体の行動に刺激を与える物質なのに対して、ホルモンは、体内の機能を促すための物質で、体内のみで働きます。たとえば、フェロモンの一般的なイメージとなっている「異性を惹きつける物質=性フェロモン」に対して、ホルモンの方には、「性ホルモン」があります。性ホルモンはテストステロンやエストロゲンなど、科学的に検証された実在する物質です。その機能についても多くのことが解明されています。「性フェロモン」の方は、上にあげた「性周期同調フェロモン」のように、わずかに現象が指摘されていても、その実態がまったく解明されていないことがほとんどです。その意味で「性フェロモン」は、今後の研究が期待されるものかもしれません。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン