年をとるとお酒に弱くなる、は本当?
投稿日: 2023年03月31日
年をとるとお酒に弱くなる、という話を聞いたことがあるかもしません。本当のところはどうなのでしょうか。今回は加齢とアルコールの代謝についてのお話です。
お酒が排出されるまでのしくみ
お酒を飲むと、飲んだ量の約2%はアルコールの状態のまま、吐く息や尿、汗となって身体から出ていきます。残りは胃から約20%、小腸から約80%の割合で身体の中に吸収され、血液の流れにのって全身にいきわたります。そして、脳にアルコールがたどり着くと、神経細胞のはたらきを麻痺させて、酔った状態になります。さらにその後、身体中をめぐったアルコールは肝臓で「アルコール分解酵素」によりアセトアルデヒドと酢酸に分解されます。その後、ふたたび血液にのって全身を流れ、筋肉などで水と二酸化炭素に分解されて、ようやく身体の外に排出されます。
“お酒が弱い”とはどういうこと?
「お酒に弱い」人は、アルコールの分解に必要な「アルコール分解酵素」がうまく働かない体質の人といえます。アルコールの分解ができないため、血中のアルコール濃度がうまく下がらず、少量のお酒でも「頭が痛い」「気持ちが悪くなる」「心臓がドキドキする」「肌が赤くなる」などの不快な体調の変化が即座に出てきます。ちなみにこの症状は、二日酔いの場合にも現れます。
「年をとるとお酒に弱くなる」は本当?
歳をとると身体が変化していきます。お腹まわりに脂肪がついたり、しわが増えたり、手足の筋力が落ちたりといった外見の変化もさることながら、体内でも筋肉量が落ちる一方で脂肪の量が増えるなどの変化が起きています。また、胃や肝臓などアルコールの分解を担う臓器にも変化が見られ、アルコールの分解能力に変化が見えるようになります。詳しく見ていきましょう。
飲酒後の血中アルコール濃度が高くなる
皮膚や筋肉には70~80%の水分が含まれているのに対して、脂肪組織に含まれる水の割合は10~30%程度とかなり低くなります。ですから、加齢によって筋肉が減り脂肪が増えると、身体全体の水分割合も減少をしていくことになります。アルコールは体内では水に溶けやすいのですが、脂肪には溶けにくいという性質があります。そのため、同じ量のアルコールを飲んだとしても、若いときよりも飲酒後の血中アルコール濃度が高くなります。
胃のアルコール分解が悪くなる
先に述べたように、飲んだアルコールの20%は胃から吸収されます。加齢によって胃の粘膜が萎縮すると、胃の粘膜にある「アルコール脱水素酵素」というアルコールの分解酵素が失われ、胃のアルコールの分解が悪くなります。
肝臓のアルコール分解能力が低下する
肝臓では、長年脂肪が蓄積されると、肝臓が褐色に見える「褐色萎縮」を起こします。これによって、肝臓の働きが弱くなり、アルコールの分解能力も落ちてきます。
以上のように、医学的にはヒトは年をとると、“お酒に弱く”なってしまうのです。若いころと同じ量を飲んでいるのに二日酔いの症状が出やすくなった、という人は、身体が変化しているサインと受け止め、お酒の飲み方を見直してみることをおすすめします。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン