汗をかかないことはいいことではない?
投稿日: 2023年06月28日
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暑い日が続いていて、少し外出しただけでも汗がダラダラ・・・といったことも珍しくないでしょう。汗っかきの人にとっては、対策が必要なシーズンが続きそうですが、逆に汗をかかないことは問題ないのでしょうか?
汗をかく理由
汗をかくこと(発汗)は、体温調節機能の一つで、生命維持にとって欠かせない機能です。厳密にいうと、発汗にはいくつかの種類があって、暑いときに起こる「温熱性発汗」、辛いものを食べた時に起こる「味覚性発汗」、緊張したり不安なときに生じる「精神性発汗」などに分けられます。このうち、体温調節にかかわるのは「温熱性発汗」で、汗の蒸発によって身体の熱を奪い、体温を下げることが、大きな目的になります。
発汗のしくみ
まず、大脳にある視床下部が体温の上昇を感知すると、司令を出して、交感神経(自律神経の一つ)の末端から、発汗に関わる神経伝達物質(アセチルコリン)を分泌させます。分泌したアセチルコリンは、汗腺(汗を分泌する器官)にくっついて、血液の成分である血しょうをもとに汗を作ります。これによって、皮膚から汗が出ていくのです。ちなみに、汗腺には2種類あって、体温調節に関わる汗腺は「エクリン腺」と呼ばれています。
汗のかきやすさはどうやって決まる?
ところで、汗のかきやすさがどうやってきまるのか、ご存知でしょうか。その要因は一つではありませんが、とくに乳幼児期(生後~約2歳半)の環境が大きく影響するといわれています。たとえば、この時期に暑い地域で生活していると汗をたくさんかくようになり、反対に寒い地域で住んでいると汗をかく量が少なくなる、といわれています。ただし、それだけで決まるわけではなく、たとえば、子どものころに運動を活発に行っていて、発汗する機会が多い場合には、発汗機能が高まる可能性があります。
さらに、男女差も大きく、一般的には男性の方が汗をかきやすいといわれています。その理由として、女性ホルモンの分泌が関係していることがわかっています。
汗をかきにくいことはいいこと?悪いこと?
お伝えしたように、発汗は身体で作られた熱を放出する上で重要な役割を担っていますから、発汗がうまくできなくなると、熱中症を発症したり、悪化する危険性が高まります。ですから、個人差はあるものの、汗をかかないことは熱中症のリスクの一つといえるでしょう。実際、「無汗症」といって、汗をかかない病気があります。まれな病気ではありますが、とくに、無汗(汗をかかないこと)が全身に及ぶ「特発性後天性全身性無汗症」の人は、熱中症のリスクが高いため、暑い時季には外出や運動をすることができません。
汗っかきの人にとっては、とくに夏場は汗が煩わしく感じることも多いと思いますが、発汗は身体にとって重要な機能です。また、汗をかくということは、それだけ体内の水分や塩分の量が減っているということですから、3度の食事をバランスよくとって、必要な塩分を補給するとともに、こまめな水分補給を心がけてください。なお、生活に支障をきたすほど発汗量が多い場合には、多汗症の可能性もありますので、気になる人は医療機関で相談してみることをおすすめします。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら ゆうな)
保健師・看護師。株式会社Mocosuku社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当