身体にある3つの脂肪について
投稿日: 2023年12月29日
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年末を迎え、忘年会に新年会など、食べ過ぎてしまう機会の多くなりがちなのが、この時季ですね。年明けに正月太りに悩まされないように、今日は3つの脂肪についてお話したいと思います。
内臓脂肪と皮下脂肪
摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余ったエネルギーが中性脂肪として蓄積されることはご存知ですよね。肥満や生活習慣病の原因ともなります。炭水化物とたんぱく質は、1グラム当たりおよそ4kcalなのに対して、脂肪はおよそ9kcalと高エネルギーな栄養素で、摂りすぎると肥満のリスクが高まります。ところで、その余った脂肪、これまでは、皮下か、お腹周りに蓄積されているとされていました。皮下脂肪と内臓脂肪ですね。人の身体の2割ほどが脂肪でできている(体脂肪)と言われます。このうち、大半を占めるのは第1の脂肪「皮下脂肪」で、皮膚と筋肉の間につきます。これに対して、第2の脂肪「内臓脂肪」は、おもに腸間膜に蓄積されます。よく、皮下脂肪型の肥満は「洋ナシ」に、内臓脂肪型肥満は「リンゴ」にたとえられます。内臓脂肪が増えるとお腹周りがポコッと出てきます。しかし、脂肪の摂りすぎで蓄積された中性脂肪は、皮下脂肪であれ内臓脂肪であれ、どこにあっても気をつけなくてはなりません。でも、これまで内臓脂肪は、とくにメタボや糖尿病など、生活習慣病のリスクが高くなる重要なサインとみなされてきました。また、皮下脂肪は女性に、内臓脂肪は男性に蓄積しやすく、皮下脂肪は貯まったり落ちたりしにくいのに対して、内臓脂肪は食生活や運動習慣によって、貯まりやすく落ちやすいことから、皮下脂肪は「定期預金」、内臓脂肪は「普通預金」にたとえられることもよくあります。
「異所性脂肪」とは
最近、第3の脂肪として注目されているのは、「異所性脂肪」と名づけられ、“場違い脂肪”などと呼ばれることもあります。皮下脂肪や内臓脂肪の脂肪細胞に入りきれなくなった中性脂肪が、たまるはずのない部位に蓄積されたものを指しています。現在、心臓・肝臓・すい臓などの臓器やその周辺、さらに、骨格筋に蓄積されることがわかっています。食材のフォアグラはガチョウの肝臓が脂肪で包まれた状態ですが、人の場合これはまさに、異所性脂肪の代表例で「脂肪肝」という病気です。また、骨格筋に蓄積される異所性脂肪は、高級和牛の象徴のような“肉のサシ”にもたとえられます。どちらも食べると美味だったとしても、健康上はよくありません。生活習慣病や、重要な臓器障害の原因ともなる脂肪として、異所性脂肪には要注意です。皮下脂肪組織に入りきらなくなった中性脂肪が、内臓脂肪や異所性脂肪として蓄積していくとも指摘されています。
さらに、異所性脂肪は、蓄積した臓器のもつ機能を悪化させると考えられているので、生活習慣病と原因としてだけでなく、蓄積した臓器の病気にも悪影響を及ぼす点で、内臓脂肪よりも危険視されています。もちろんそれはそうですが、皮下脂肪も内臓脂肪も、摂りすぎによる蓄積は怖いことに変わりはありません。その点も忘れないように、年末年始も考えて食事をしたいものですね。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン