「フレイル」って知っていますか?
投稿日: 2022年06月16日
![](https://www.kangoworks.com/knowledge/wp-content/uploads/2022/06/pixta_64866499_S-560x373.jpg)
2020年4月から開始されている「フレイル健診」。75歳以上の人を対象にした健診ですが、みなさんは「フレイル」という言葉の意味を知っているでしょうか?
そこで今回は、「フレイル」について解説していきます。
フレイル健診が始まった背景:日本の健康寿命について
日常生活が制限されることなく、自立して生活ができる期間のことを健康寿命といいます。「日常生活に制限がない」というのは、つまり、介護状態や寝たきりにならずに生活ができることを意味します。世界的にも平均寿命が高いことで知られる日本。2018年の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳でした。いっぽうで2016年の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳。つまり、平均寿命と健康寿命の差が10年前後もあり、これが大きな問題として注目されています。また、WHO(世界保健機構)によると、2016年、世界でもっとも健康寿命が高いのはシンガポールで、76.2歳でした。ただし、WHOと厚労省とでは計算方法が異なります。WHOの統計では、日本の健康寿命は74.8歳で、世界第2位となっています。
さて、お伝えしたように、日本では男女ともに、平均寿命と健康寿命の差が10年前後あります。これはつまり、寝たきりや、介護を必要としながら生活をする期間が約10年間あることを意味します。少子高齢化が進み、社会保険料の増大が喫緊の課題となっている日本では、この差を短くするために、国や学会はさまざまな取り組みを行っています。その一つが「フレイル」対策です。
「フレイル」とは
フレイルとは、加齢によって身体機能や認知機能などが低下し、また、慢性的な病気が重なることで生活する上で必要な心身の機能が落ちて、健康障害を起こしやすい状態を指します。フレイルは、健康な状態と寝たきりや介護を必要とする状態の中間といわれますが、同時に、適切なサポートを受けることで生活機能を回復し、自立した生活に戻り得る状態でもあります。ですから、フレイルの時点で治療や予防を行うことがとても重要視されています。
そこで厚労省は、2020年度から75歳以上が対象の後期高齢者医療制度健診に、フレイルの状態を把握するための検査として、「フレイル健診」を追加することを発表しています。
ちなみに、フレイルの語源は、「虚弱」や「脆弱」を意味する「Frailty:フレイルティ」です。日本では、「回復しうる状態」であることを強調するために、「虚弱」や「脆弱」という呼び方をせず、あえて「フレイル」という言葉を使うことが決められたそうです。
フレイル健診について
2020年度から始まったフレイル健診は、合計15項目の質問票を使って行われています。その中には、体重減少や歩行速度などの質問のほかに、食べ物の咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)に関する質問、物忘れの状況に関する認知機能を確かめる質問、外出の頻度や家族・友人との関わりといった社会参加に関する質問などもあります。つまり、身体機能や認知機能の状態を確認するとともに、それを悪化させる要因である社会参加の状況も確認しようというのが、フレイル健診なのです。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン