予防接種のキホンをおさらい
投稿日: 2022年06月30日
最終更新日: 2022年08月03日
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新型コロナウィルス感染症の流行もあって注目されるようになった予防接種。そもそもどういうもので、どんな病気が防げるかご存じでしょうか。今回は、予防接種のキホンをおさらいしていきます。
ワクチンの由来
予防接種は vaccination(ヴァクシネーション)という用語の翻訳語です。この中の vacca という言葉はラテン語で「牛」を意味していて、1796年にイギリス人の医師エドワード・ジェンナーが牛からとったウィルスを、人間の天然痘という病気の治療に用いたことに由来しています。この治療法はちょっと危険な治療法ともいえます。というのも、重い病気にかからないようにするために、弱い病原体をあらかじめ身体に投与するという方法(天然痘の場合は「種痘」と呼ばれています)だからです。そしてこの、身体に投与される弱い病原体のことを「ワクチン」と呼びます。
予防接種で病気を防げるのはなぜ?
予防接種が「免疫」という仕組みを活用させる方法だということは、皆さんご存じでしょう。あらかじめ弱い病原体を身体に入れておくと、それが「抗原」と呼ばれる、病気に対する抵抗力になります。ですから、再びその病原体(抗体と呼ばれます)が侵入してくると、二度目からは抗原が抗体をやっつける武器となるのです。これを「獲得免疫」あるいは「適応免疫」と呼んでいます。
免疫とは「疫(=病気:もともと悪性の伝染病を指していました)を免れる(災いに遭わないで済む、逃れる)」という意味です。このように、悪(病原体)をもって悪(病気)を制すというのが免疫であり予防接種です。現代では最大限の安全性を担保しているものの、ジェンナーの時代のような昔の免疫発見史には、研究者本人も含めて幾人もの犠牲があったことでしょう。
予防接種で社会を守る
予防接種には、自分が病気にかからないようにという意味ももちろんありますが、それだけではありません。予防接種には一人一人を病気から守る「個人防御」のほかに、集団やコミュニティへの感染拡大を防ぐ「集団防衛」、予防接種を受けられない人たちを感染症から守る「集団免疫」の3つの目的・意義があります。たとえば、現在、風疹の予防接種が奨励されていますが、これには、先天性風疹症候群という、胎児がかかる可能性がある症状への予防という目的があります。ですから、胎児という、予防接種を受けたくても受けられない存在への「集団免疫」の意義が大きいわけです。
そして、VPD(Vaccine Preventable Diseases)と呼ばれる、ワクチンで予防可能な病気に対しては効果的だといわれます。
おもなVPDの病名
B型肝炎、ロタウィルス、ヒブ(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、結核、麻疹(はしか)、風疹、おたふくかぜ、水痘(みずぼうそう)、日本脳炎、インフルエンザ、ヒトパピローマ、A型肝炎、髄膜炎菌、黄熱病、狂犬病など
日本は「医療大国」といわれながら、ワクチン接種率は欧米などと比べると、決して高くないと言われています。その結果、VPD感染が起こって、中には重い後遺症が残る場合もあるとのこと。ですから、ワクチンや予防接種ことをよく理解して、もっとこれを正しく活用していくことが求められています。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン