座りすぎが招く健康トラブルとは
投稿日: 2022年07月15日
最終更新日: 2022年08月03日
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あなたは1日にどのくらい座った状態で過ごしているでしょうか?「考えたこともない」という人もいるでしょうが、実は日本人は座位時間が長いことが、過去の調査で分かっています。そして、座りすぎは身体だけでなく、メンタル面での不調を招くことが指摘されています。そこで今回は、座りすぎが招く健康トラブルについて取り上げていきます。
日本人は座りすぎ!?
世界20か国の成人を対象に、平日の座位時間について行われた調査(2011)の結果、「座りっぱなし」なのは日本人が最長で、1日7時間にものぼることがわかりました。ちなみに、全体の平均は5時間でした。しかも、この調査は就業時間に限っています。このほかにも、帰宅後にテレビやスマホで座りっきり、ということも大ありです。ですから、40~60歳を対象にした日本人への別の調査では、1日の平均的な総座位時間は8~9時間という結果も出ています。
座りすぎが招く健康トラブル
座りっぱなしは別の言い方をすると“不活動”です。こうしたライフスタイルの定着によって、筋肉の代謝や血流の悪化が起こって、肥満・高血圧症や心筋梗塞などの心血管疾患・ロコモティブシンドローム(運動器官の不活発)・糖尿病・がん・認知症といった生活習慣病へのリスクが高まり、1日8時間以上座っていると、なんと死亡リスクが最大40%増、つまり、1.2倍になるという研究結果も発表されているのです。
そして、WHO(世界保健機構)が健康のために提唱している1日30分以上の有酸素運動を週5日間実施していても、この死亡リスクを相殺することはできないと言われています。
また、身体的な病気だけでなく、メンタルヘルスへの悪影響も指摘されていて、仕事中に5.7時間以上座っている人は、3.5時間未満の人に比べて、約2倍、慢性ストレスやうつ状態などメンタルヘルスが悪化しやすくなるとも言われています。
座りすぎを防ごう
たとえばイギリスでは2011年に、「座り過ぎのガイドライン」が発表され、「就業時間中に少なくても2時間、理想的には4時間、座っている時間を減らして、立ったり歩いたりする、低強度の活動にあてるべき」と勧告されているそうです。
また、企業などの中には、座り過ぎの解消に「スタンディング」と呼ばれる、立ったままで業務や会議を行ったり、昇降式デスクを使って立っていても座っていても業務ができるようにしてみたり、あるいは、作業時間に「ブレイク(中断)」をつくって、30~1時間ごとに1回、立ち上がる活動を取り入れたりと、さまざまな工夫をしているところもあります。
さらに最近は、活動量計などを常用して体調管理をする人が増えていますが、その機能の一つに「座り過ぎ」を警告するブザーを設定するような商品も販売されて、人気を博しているようです。
座って生活することが当たり前になると、「座り過ぎ」ている現実に気がつきにくいかもしれません。ついつい夢中になっていると立ち上がることを忘れがちになりますが、アラームをセットするなど、ちょっとした工夫を取り入れて、座りすぎを予防したいものですね。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン