単なる汗っかきとは違う!?多汗症について
投稿日: 2023年06月15日
暑くなってくると気になるのが、においや洋服の汗染みなどの「ワキ汗」。人と会うことが多かったり、人前に立つような職業の人はとくに気をつかいますね。生理現象であり、自分でコントロールできないものですが、あまりにひどい場合は「多汗症」を疑ってみてもいいかもしれません。そこで今回は多汗症について解説します。
汗をかくしくみ
ワキには、足の裏や手のひら、額などと同じように多くの汗腺が集まっています。人間はこうした部位に常に汗をかき、体温調節をしています。ですから、暑いときや緊張したときなどにワキに汗をかくのはごく自然な現象です。
人間の汗はほとんど、エクリン腺から放出されます。その成分は99%が水分で、残りの1%は塩分、尿素、アンモニア、カルシウムなどで構成されています。エクリン腺からの汗は、ほとんどにおいを発しません。けれども、ワキの下や足の裏など、特定の部位にはアポクリン腺(通称「フェロモン腺」)があって、極度に緊張する、合わない靴をはくなど、ストレスが強い状況では、ここから汗が分泌されるようになっています。
実は、アポクリン腺の汗の成分も、エクリン腺から放出される汗とほぼ同じですが、たんぱく質、脂質などを多少含んでいます。それで、通常はそれほど臭いが気にならないのですが、人によっては、アポクリン腺から特有の強いにおいを発するケースがあります。腋臭症(ワキガ)で、多汗症とは異なる病気です。多汗症は、交感神経がうまく機能しなくなることにより、体温上昇とは関係なく、エクリン腺から汗が過剰に出る病気のことです。
多汗症のタイプ
多汗症には2つのタイプがあります。
続発性多汗症
疾患をもっている人がなる多汗症です。たとえば糖尿病、低血糖、甲状腺疾病等の全身性疾患や脳下垂体、および視床下部の病変等の中枢神経疾病などです。
特発性多汗症
とくに基礎疾患のない人がなる多汗症で、多汗症の大多数を占めます。遺伝的な要素が強く、一般的には幼少期から思春期に発症し、年齢を重ねるごとに症状が重くなってきます。精神的緊張が多汗の原因といわれています。ワキの下のほかには、てのひらや足の裏にも発症します。
特発性多汗症は特定疾患に指定されています。強度のストレスや肉中心の食習慣等が続いてきたことにより、症状が出やすくなるともいわれています。病状を気に病みストレスがたまり、仕事や勉強へ悪影響がでたり、対人関係へ支障をきたすなど、社会生活での悪影響も大きいのです。
治療について
治療方法としては、塗り薬や内服薬があります。症状が重い場合は、多量の汗を放出するエクリン腺が働かないように処置をする手術が必要です。それでも、手術で完全には働かないようにするのは難しく、手術後にエクリン腺が再生する可能性もあるため、完治は難しいとされています。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン