看護師は転職回数が多い!? 転職を繰り返す理由とは
投稿日: 2019年12月26日
最終更新日: 2024年02月20日
執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
「売り手市場」とも言われる看護師は、ニーズが高い反面、転職回数も多い傾向があります。
今回は、看護師が転職を繰り返す理由について、さまざまな視点から探っていきます。
こうした現状を知ることは、皆さんにとって納得できる職場選びや、長く働くことにつながるのではないかと思います。
このページの目次
需要が多い看護師の仕事
転職を繰り返す人がいる、というのは、何も看護師に限った話ではありません。
どのような業界にも、今の仕事は自分に合わないと感じ、すぐに転職する人はいるものです。
とはいえ、看護師の転職回数が多いのは事実です。
大きな理由の一つは、いつでも転職が可能という求人状況でしょう。
看護師不足は目下、日本全体が抱える深刻な課題です。
団塊の世代が後期高齢者の年齢に達する2025年以降、医療のニーズはさらに増すと指摘されています。
さらに厚生労働省は、2025年には看護職員が6〜27万人程度不足するとの推計も公表しました。
昨今看護師を育成する教育機関は増加しており、実は、看護職員は年間3万人のペースで増えています。
にもかかわらず、さまざまな理由から離職する人が後を断ちません。
その結果、看護師の求人は慢性的に多く、ほとんどの人が「仕事を選ばなければいつでも再就職は可能」、という状態に置かれているのです。
国家資格であることに加えて、こうした需要の多さ、選択肢の豊富さが、看護師の転職回数を増やしているといえるでしょう。
しかし、いくら求人数が豊富でも、満足する職場であれば、多くの人がそこで働き続けるものです。
それでは、看護師たちは実際にどのような理由で転職をするのでしょうか?
看護師の転職で多い理由
看護師が転職を考えるきっかけとして多い理由は、給与など待遇面での不満、希望と合わない仕事内容、人間関係のトラブル、ライフイベントの変化などによって生じる勤務時間の問題などが挙げられます。
また、進学や留学、医療から離れて新しい分野にチャレンジするという人もいます。
このようなライフプランや目標の変化によって、転職を選択するケースは珍しくありません。
言いかえると、結婚や子育て、介護など、自分自身や家族の状況に合わせて、職場や働き方を選びやすい点は、看護師という仕事の大きな魅力でもあります。
しかし、実際にはこのような理由以外で短期間のうちに転職を繰り返す人もいます。
なぜでしょうか?
転職を繰り返しやすい人の特徴
短期間に転職を繰り返す人たちには、次のような共通点がみられます。
〇失敗したことを思い悩み、自分を追い詰めた結果、転職を繰り返す
看護師を目指すきっかけは人それぞれですが、多くの人が「人を助けたい、誰かの役にたちたい」という思いを少なからず持っています。
それゆえ、真面目で頑張り過ぎる、失敗をした時に自分を追い詰める、という人もいます。
とくに新人の看護師は、学校で学んだことと現場のギャップに苦しむ、ミスを引きずって落ち込む、先輩からの注意を重く受け止める、といった悩みに陥りやすいようです。
多少の失敗は誰にでも起こるもので、大切なのは失敗を反省し、次に活かそうとする姿勢です。
新人に限らず、気持ちの切り替えが苦手な人は、「自分は今の職場に合っていないのでは」「必要とされていないのでは」などと思い詰め、「転職」という選択肢に頼ってしまいます。
〇職場で起こる不都合に我慢ができず、転職を繰り返す
看護師として働く上では、同僚や先輩、後輩、医師など、様々な職場の人と人間関係を築かなければいけません。
その中にたいてい一人や二人は、苦手と感じる人もいるものです。
また、患者や患者の家族との行き違いや、トラブルが生じることも日常茶飯事です。
もちろん、手を打っても改善を図れない場合は、転職して環境を変えるのも悪い方法ではありません。
しかし、相手を理解しようと歩み寄ったり、関係を変える努力をしたりせず、すぐに職場を変えようとする人は、結果的に転職を繰り返します。
転職回数は再就職に影響する?
転職が避けられない状況であったにせよ、ささいな理由で何度も繰り返しているにせよ、転職回数が再就職に及ぼす影響の有無は、とても気がかりだと思います。
売り手市場とはいえ、雇用する側は「信頼できて、長く働いてくれる人」を求めています。
看護師の平均転職回数は2回ともいわれますが、頻繁に転職をしている人は、採用側にネガティブな印象を与える可能性があることは覚悟しておいてください。
とくに、短いスパンで転職を繰り返している場合は、その理由について間違いなく質問されます。
それでも、職場を辞めた理由や、新たな職場を検討した前向きなきっかけなどを適切に伝えられれば、再就職の面接においても理解を得られるでしょう。
転職回数は少なからず再就職に影響しますが、何よりも重要なのは、転職する明確な目的を言葉にすることです。
長く働き続けられる職場選びを
「人生100年時代」といわれる今、生涯を通して働く期間は延びており、ある意味キャリアをチェンジする機会も増えています。
今後、看護師人生においても、転職は必要不可欠なものになると思います。
自身のライフステージや看護師としての目標にうまくマッチした転職は、キャリアの幅を大きく広げてくれる有効な手段です。
一方で、転職にはさまざまな困難やストレスも伴いますから、安易に転職を繰り返すことにならないよう十分に気をつけてください。
再就職時の不利益や、後悔の種にもなりかねません。
転職を良い意味の転機にするためには、納得できる環境を慎重に選ぶことが重要です。
さらに、多少のトラブルは克服し、自分の糧とする努力も必要です。
転職の目的をよく考えて明確にしたうえで、長く働き続けられる職場を選びましょう。
看護師は転職回数が多い!?転職を繰り返す理由とは:まとめ
- 看護師に転職が多い理由の一つは、慢性的な人出不足で、常に求人が多い状況にある
- 待遇面、仕事内容、人間関係の問題など、さまざまな転職理由がある
- ライフステージに合わせて仕事を選びやすい点は、看護師の魅力ともいえる
- 真面目ゆえに失敗を重く受け止める人は、職場での自分の価値を見失いやすい
- 職場の不都合に我慢ができず、転職を繰り返す人もいる
- あまりにも転職回数が多いと、再就職時のマイナス要素になる可能性もある
- 転職する際は、その理由や目的を明確に伝えられることが重要である
- 転職を活かしてキャリアの幅を広げるためには、納得できる職場を慎重に選ぶことが大切である
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<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供