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看護師に対するセクハラ… セクハラを受けたらどうすればいい?

投稿日: 2019年02月01日
最終更新日: 2024年02月21日

 
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社Mocosuku
 
 
昨今、性的被害を告発する動きが増えてきていますが、看護師のセクハラ被害についてはまだまだ見過ごされてしまうことが多いようです。
 
そもそもどのような経緯で看護師に対するセクハラは起こるのか、被害を受けたときにはどう対処したらよいのか、考えていきます。
 

 

看護師が受けているセクハラとは?

 
本人の意に反する性的な言動に対して拒絶や抵抗を示した際、降格など就業上不利益な扱いを受けたとき、また、本人が精神的な苦痛を感じて仕事が手につかないなど仕事に支障を来たしたときなど、その性的な言動をセクハラ(セクシャルハラスメント:sexual harassment)と呼びます。
 
看護の場でよくあるのは、患者の採血や血圧測定、清拭などのときに、患者から身体を触られるケースです。
 
さらに、性的な雑誌や動画などをを故意に見せたり、看護師の顔かたちや身体に関する性的なからかいは日常茶飯事とも言えます。
 
そのうえ、一緒に働く医師や同僚などから受けるセクハラもあります。
 
 

看護師に対するセクハラの現状とは?

 
日本医療労働組合連合会(医労連)の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、セクハラを受けた経験について1%が「よくある」、14%が「ときどきある」と回答しています。
 
つまり、15%の看護師がセクハラ被害にあっているという認識を持っていることになります。
 
さらに、この設問に対して「わからない」と答えた看護師は8.5%おり、これが意味するところについても考える必要があるでしょう。
 
不快と感じる言動をされたが、セクハラにあたるのかわからない、ただの冗談だと受け流したい…そう解釈したかもしれません。
 
セクハラが珍しくない環境に身を置いていると、その状況にいわば「慣れて」しまい、判断が難しくなっていることは十分に考えられます。
 

同調査で、セクハラを誰から受けたかという設問に対しては、患者が78.7%ともっとも多く、次いで医師が20.9%、上司が8.1%、同僚が7.2%、患者の家族が2.1%でした。
 
さらに2018年になって、初めて訪問看護師を対象とした全国的な調査「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究」が行われ、訪問看護師に対する暴力やハラスメントの実態が明らかになり始めています。
 
全国訪問看護事業協会が実施した当該調査によると、利用者やその家族からセクハラを受けた経験のある訪問看護師は48.4%で、実に半数近くにのぼるといいます。
 
過去1年間に限っても31.7%と、在宅看護における被害が現在進行形であるという現実が数値上も浮き彫りになっています。
 
 

患者による看護師へのセクハラはなぜ起こるのか?

 
前述の調査で圧倒的に多かった、患者からのセクハラに絞って考えてみましょう。
 
看護師という仕事に特有な環境として、患者との距離が近く、処置やケアなどで直接身体に触れる機会が多いことが挙げられます。
 
とくに病室では、カーテンなどの仕切りによって、他者の目に触れにくい状況が生まれやすいことも要因のひとつです。
 
訪問看護に至っては完全に密室での仕事になるため、病院に比べると極めてリスクが高くなります。
 
また、「患者」という立場を勘違いしている人もいます。「自分は患者だし、何をしても怒らないだろう」と高をくくっている人が実際にはいるのです。
 
しかしながら、病気だったとしても、「やっていけないこと」をしてしまっていることに変わりはありません。
 
患者を受容することと、暴力を容認することはまったくの別問題なのですが、そこを見誤っている人が少なからずいる、と言うのはとても残念なことです。
 
 

医師による看護師へのセクハラ・パワハラはなぜ起こるのか?

 
医師によるセクハラは、パワハラの要素と一体になっているケースが多いようです。
 
医師の権力や立場に逆らえず、関係性を崩したくないという理由もあり性的な要求を我慢してしまうのです。
 
「結婚はまだ?」「だから彼氏ができないんだよ」など、不必要かつ度が過ぎるプライベートな性的話題に踏み込む行為もセクハラに該当します。
 
もちろん、こうした行動に及ぶのはごく一部の限られた人です。
 
しかし、それによって看護師として働くことに支障が出るほどのトラウマを抱えてしまう人も多くいます。
 
看護の場がセクハラの温床になりやすい要因のひとつに、性差別的な考え方があります。
 
「男だから」「女のくせに」のように、男女の役割をステレオタイプに押しつけることを「ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)」と呼びます。
 
たとえば、女性に酒席でお酌をさせ、男性医師の隣に座らせる、一方男性には、キャバクラなどの風俗店に行くことを強要する、などの行為です。
 
こうした男女差別的な価値観にまったく疑問を持っていない人は、セクハラ加害者になる可能性が高いと言えるでしょう。
 
 

セクハラを受けた看護師の二次被害

 
実際にセクハラ被害にあってしまうと、動揺して気持ちの整理がつかず、逆に自分を責めてしまうかもしれません。
 
なおかつ、事の次第を同僚の看護師や師長、主任などに報告して思いがけず二次被害に発展するケースも考えられます。
 
「あなたの対応が悪かったのでは」「気をつけていれば防げたのに」と逆に当人を責めるような物言いをされたり、「それくらいのことで報告されると仕事が増える」「最近の子はちょっとしたことで大騒ぎする」と被害を過小評価したりする上司や同僚もいます。
 
ただでさえ当人は自責の念に駆られ弱っているのに、このような心無い言葉をぶつけるのは傷口に塩を塗り込むとしか思えない行為です。
 
性被害を受けた人が逆にバッシングを受ける二次被害は、セクハラをなくそうという職場全体の意識が高まらない限り防げないでしょう。
 
意識改革を進める職場も増えてきてはいるものの、まだまだ見て見ぬふりをしている組織も多いのが現状です。セクハラ行為が「看護師あるある」で済まされ、軽んじられている職場がいまだにたくさんあります。
 
とくにトップに理解がないと、そこで働く看護師たちはとても苦しめられることになります。
 
間接的な加害者とならないためにも、「ダメなものはダメ」と常日頃から声を上げていく姿勢が職場全体に求められます。
 
 

看護師がセクハラ被害を受けたときどうすればよいのか

 
被害者本人、同僚や上司などまわりの人、施設を運営する事業主など、立場によってできる対処がありますので以下に見ていきましょう。
 
 
セクハラ被害を受けた看護師はどうする?
 
一緒に働く同僚や上司がハラスメントについて理解があれば、まずはできるだけ速やかに報告してください。
 
お互いに業務多忙で時間がとれないときは、申し送りとして記録してもよいと思います。
 
激務をこなしていると、周囲に迷惑をかけるのではないかと遠慮して報告をためらうかもしれません。
 
しかしながら、セクハラが本来の看護業務を妨げている以上、少しずつでもその被害をなくすべく対応することの方が先決です。
 
実際にある看護師がセクハラを上司に報告したところ、医師が患者を叱ってくれて、それをきっかけにほかの看護師たちもセクハラ被害に声を上げ、病棟全体で話し合う機会ができた、というケースもあるようです。
 
その病院では、話し合いの末対策を強化し、セクハラ被害が減少したといいます。
 
事業主は、セクハラ被害への迅速な対応が義務付けられています。
 
ですから、セクハラを受けたときは速やかに報告をするのが最善策です。
 
とはいえ、報告しても否定的に受け取られることがわかりきっているような職場もあります。
 
このようなケースでは、まずは自分の話を否定せずに聴いてくれる友人や家族に話しましょう。
 
直接の具体的な解決につながらなくても、誰かに話すことで気持ちが楽になりますので、くれぐれも自分一人で抱え込まないようにしてください。
 
また、病院の相談窓口や、労働組合に相談するという手段もあります。
 
もちろんあなたのプライバシーは守られます。
 
 
まわりの人はどうする?
 
ショックを受けている同僚をなぐさめるつもりで「たいしたことないよ」「よくあることだから」などと声をかけるのは、先にも述べたように逆に被害者を傷つけてしまいます。
 
まずは「そんなことがあったんだね」「いやな気持ちだったね」と受け止めてあげてください。
 
実際の場面を詳細に話すと、思い出して苦しくなる人もいますから、こちらから根掘り葉掘り訊こうとせず、本人が話す気持ちになったタイミングで聴き手になりましょう。
 
被害を受けた当人は、自分を責めている、あるいは自分の対応が責められるのではないかと恐れている可能性もあります。
 
ですから、「あなたは悪くない」とはっきり言葉にすることも大切です。
 
上司ができる具体的な措置としては、患者によるセクハラの場合は、ほかの看護師に担当を変える、複数の看護師で対応する…などが挙げられます。
 
仮に複数対応にしても、その患者の病室に行こうとすると動悸がする、苦しくなるという心身の症状が出ているときは、完全に無理というサインです。
 
本人からそのような申し出があったときは、まわりは否定的な態度を取らず、現実的かつ有効な対策を速やかにとりましょう。
 
 
報告を受けた事業主はどうする?
 
病院などの事業主は、セクハラ被害の報告を受けたら速やかに対応することが義務付けられており、厚生労働大臣の指針によって、以下の10項目が定められています。
 
【1】 何がセクハラにあたるのか、またセクハラを許さないという方針を明確にし、周知・啓発すること
【2】 セクハラ行為をした者には厳正に対処する旨とその内容を規定し、周知・啓発すること相談窓口を設置すること
【3】 相談窓口を設置すること
【4】 被害者からの相談に対して適切に対応すること
【5】 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
【6】 被害者に対して、適正な配慮をした措置をすること
【7】 セクハラ行為をした者に対して適正な措置をすること
【8】 再発防止措置を実施すること
【9】 当事者のプライバシーを保護するための措置をすること、それを周知すること
【10】 相談や協力などを理由にした不利益な扱いを禁止し、周知・啓発すること
 
事業主がセクハラ対策や意識改革を徹底し、働きやすい職場環境をつくることで離職者減少にもつながります。
 
一緒に働く人たちもセクハラ被害に対する理解が乏しく、守ってくれるはずの施設側も何もしてくれないという職場環境では、転職も視野に入れて自分の心身を守ってください。
 
 

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看護師に対するセクハラ:まとめ

 

  • 看護師に対するセクハラには患者からのもの、同僚や医師からのものなどがある
  •  

  • 看護師へのセクハラが起こりやすい要因として、患者との身体的な接触機会が多いことや、「患者」という立場を勘違いしている人がいることなどが挙げられる
  •  

  • セクハラを報告した看護師が、同僚や上司などから責められるという二次被害にあうことがある
  •  

  • セクハラに慣れてしまっていると、間接的な加害者になる可能性がある
  •  

  • セクハラ被害を受けた看護師は、基本的には上司に報告して対応してもらうのがよいが、それが適切に行われない状況では、友人や家族、外部の相談機関に話す
  •  

  • セクハラを知ったまわりの人は、まずは被害者の気持ちや状況を受け止め、患者の担当を変えるなどの対応をする
  •  

  • セクハラの報告を受けた事業主は、規定に則った速やかな対応が義務づけられている

 
こちらの記事もぜひご覧ください。
看護師を辞めたい理由とは?
 
 
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 Mocosuku 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
 
<監修者プロフィール>
株式会社 Mocosuku
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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